Century Plantが咲く頃に
ほどなくして、約束は忘れた。
言い訳をさせてもらうなら、院か就かの瀬戸際だったんだ。
この就職氷河期に咲く、一輪の花は、吹雪によって凍ってしまい、しばらく経つと、彼女のことすら思い出さなくなっていた。
それなのに一年後、僕はまたこうして、竜舌蘭のしたにいる。
いや。
僕たちは、竜舌蘭を挟んで見つめあっていた。
確固たる理由はない。
昨日の晩飯すら思い出せないというのに、彼女と過ごしたわずかな時間、そして約束を僕は果たそうとしていた。
まさか居るわけがない。からかわれただけだ。
でもひょっとしたら…。
儚い希望はクエスチョンを伴って戻ってきた。
竜舌蘭の根元で、1人佇む女性。
女性というものは、たった一年でこうも様相が変わるものか。
僕は思わず、自分の格好を見下ろした。
なにを期待してか、ジャケットを着てきたが、去年と同じだったらどうしよう?昨日の晩飯すら思い出せないのだから、それすら分からない、漠然とした不安。
ええい。どうにでもなれ。
「あの、この花が咲いたら付き合いませんか?」
僕は彼女を口説いた。
約束どおり。
一年前と同じ、口説き文句で。