Century Plantが咲く頃に
ひっそりと竜舌蘭に寄り添う姿は、値打ちのある絵画のようだった。
まるで彼女は、そこに生えているように。
百年以上、鎮座する、竜舌蘭よりも遥か昔から。
「この花が咲いたら、僕と付き合って下さい」
英国紳士みたく、恭(うやうや)しく頭を下げた。
すると彼女はまた____。
困った顔をし、慌ててノートを取り出す。
「あなたは…ロボット‼」
「いや、僕はロボットではないけど、思い出したかな?」
僕はそれほど変わってないのに。
見る度に変わるのは、君のほう。それも厄介なことに、魅力が増すんだ。
「ええ、思い出したわ」
にっこりと笑う彼女の目は、なぜか泳いでいて。
怯えているように見えた。
会話を急ごうとする彼女を。
「そういえば僕の名前は、小林武史」
「あ、私は…中川満ちる」
「三年も経って、初めて知ったね」
「そうね、改めてよろしく」
「それでまた、僕は一年後に君を口説けばいいのかな?」
「それは…」
満ちるが言葉に詰まった。
でも僕は続けた。
「君は本当に、僕のことを思い出したのかな?」
満ちるの目から涙がこぼれ落ちても、僕は続けたんだ。
「君は、なにも思い出してないんじゃないかな?」