よりみち喫茶
最初からお店は二人でやるつもりだったけれど、せっかくなら驚かせようと思って今まで内緒にしていたのがどうやら効いたようだ。
ここに来るまで不安そうでどこか寂しげだった表情が、徐々に喜びへと変わっていく。
「一緒に、素敵なお店を作りましょう」
嬉しそうに頷いたその顔には、はにかむような笑顔が浮かんでいた。
ピンっと立てた人差し指を、そっと小さな体に向けると、こちらもニッコリと微笑み返す。
「はるくんの心にも、いつか平和が訪れますように」
不思議そうな顔で首を左にコテっと傾ける姿を見てクスリと笑うと、もう一度今度は先ほどより少し強めに、ギュッとその体を抱きしめた。
「これからはここが、はるくんの新しい居場所になるよ。……だからもう、寂しくないね」
おずおずと背中に回された腕に、ゆるゆると力が込められるのを感じながら、わたしはそっと視線を上げてその建物を見上げた。
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