甘い恋飯は残業後に


「嫌な思いをさせて悪かったな」

難波さんはわたしの傍まで来ると、わたしと同じように壁にもたれた。


「別に……難波さんが謝ることなんてないですよ」

「原田先輩は、普段はいい人なんだが……飲むとあんな風に時々、悪い酒になることがあるんだ」

難波さんだってさっき嫌な思いをしただろうに、わざわざ彼を擁護するなんて。この人は意外とお人よしなのかもしれない。


「同い年でも“先輩付け”して敬語で話してるんですね」

「体育会系なんて、どこもそんなもんだろ。上下関係は年齢じゃなく、学年で決まるものだからな」

確かに兄貴もあんないい加減な奴だけど、上下関係だけはちゃんとしているように見える。体育会系の世界っていうのは大変なんだな。


それなら、こんな風に抜けてきて大丈夫なんだろうか。

そう考えていたら、難波さんの隣に座っていた彼女のことが頭に浮かんだ。


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