甘い恋飯は残業後に
「あの、わたしは大丈夫ですから、難波さんはもう店に戻って下さい。いろいろと……誤解されてもなんですし」
「誤解って、誰に、何を?」
「隣に座っていた方、彼女さん、ですよね?」
難波さんはきょとんとした顔でこちらを見ている。ややあって「は?」と驚いたような声を上げた。
「隣に座っていたのは、大学のサッカー部のマネージャーだった女性だ。別に今も昔も、彼女とは付き合っていない」
それが本当であれば、彼女の片思い、ということか。彼女が難波さんに気があることは、傍目で見ていてすぐに気づいた。
難波さんは気づいていないのか、気づかないふりをしているのか。
「そうなんですか。でも、わたしが難波さんをひとりじめしてたら、妬まれそうだし」
「妬む奴なんかいないだろ。逆に俺の方が原田先輩に妬まれてるよ」
難波さんは笑い交じりにそう言う。
「試合の時だって、たくさん声援を受けてたじゃないですか」
「長い付き合いの奴が多いからだろ」
どうしても認めないつもりなのか、この人は。
ちょっと、ムカついてきた。
「いいじゃないですか、モテるって認めたって。モテないよりいいと思いますよ」