甘い恋飯は残業後に


「ちょっと叔父さん! どうして黙ってたのよ、難波さんが兄貴とサッカーやってたこと」

難波さんが黙っていた理由はこの間聞いた。わたしは、他のお客さんを送り出してちょうどこちらに戻ってきた叔父さんに向かって、恨み半分に問い掛けた。


「それは……」

叔父さんは難波さんの方をちらりと窺っている。その様子から察するに、難波さんが口止めしていたのだろう。まあ、予想通りといえばそうだけど。

「しかも打ち上げに必ずこの店を使ってたなんて……わたしひとり知らないで、バカみたいだったじゃない」

「バカにしていたつもりなんかない。この間も言っただろ。俺が勝手に気を回しただけだ。それに、桑原が高柳さんもK大サッカー部の出身だってことぐらいは知っていると思っていたんだ」

諭すように、難波さんはわたしに説明する。


――ちょっと待って。

「叔父さんもK大サッカー部だったの?!」

叔父さんとは長い付き合いなのに、今までそんな話、一度も聞いたことがなかった。


「あれ、言ってなかったか? 俺もK大サッカー部のOBなんだよ、宗司や千里と同じくな。だからここの店名にも、サッカーにちなんだ名前をつけたぐらいだし」

「『ラーボ・デ・バッカ』が? “牛のしっぽ”っていう意味だって前に聞いたけど」

叔父さんは、ふふん、と得意げに鼻を鳴らす。


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