甘い恋飯は残業後に
――なあんだ。
この人、結構かわいいところもあるんじゃない。
「ふふふふ」
「笑うな!」
言われても簡単には止められずそのまま笑っていると、「うるさい!」と難波さんの手がこちらに伸びてくる。反射的に身を縮めたが、その手はわたしではなく、目の前の皿に伸ばされた。
「ちょ、っ……わたしのラム肉!」
「人をバカにする奴にはお仕置きが必要だ」
難波さんは掴んだラム肉にワイルドにかじりついている。それがまた似合うから、怒りよりもおかしくなってくる。
「バカにした訳じゃ……ただ、難波さんも意外とかわいいところあるんだなって」
「かわいい、って何だよ、やっぱりバカにしてるんじゃないか」
やり取りを終え、ふと視線を感じて目の前を見ると――。
「ふっふっふっふ」
どうやら一部始終を見ていたらしい叔父さんが、もの凄くいい笑顔で笑っていた。
「仲良しだねぇ。ごちそうさん」
居た堪れず、黙って俯く。ちらりと横目で隣を伺うと、彼はこちらとは反対側を向いて頬杖をついていた。
ちょっと、この空気どうしてくれんのよ叔父さん。
当の本人は言いっぱなしで、厨房の奥へと引っ込んでしまった。