甘い恋飯は残業後に


……沈黙が、気まずい。

この空気を何とかしたいのだけど、こういう時に限って仕事の話題も浮かんでこない。


「……あの」

「……何だ」

「別に、甘いもの好きでもいいと思いますよ。男性が甘いもの好きじゃいけないってことはないんだし」

結局、気の利いた話題は思いつかず、さっきのフォローをする形になってしまった。難波さんは特にそれに返事をすることはなく、ただ黙って聞いている。


「むしろ親近感、というか……だって難波さん、最初は随分と取っつきにくかったから」

「取っつきにくくて悪かったな」

ふて腐れたような口調ではあったけど、口許は笑っている。


妙な空気、少しは変えられただろうか。

仕事の話やら他愛もない話をしているうち、始めこそぎこちなかったものの、自然と元の状態に戻ってほっとする。


それから、ふたりでボトルのワインをすべて飲み干し、最後は難波さんおすすめのカシスのソルベを頼んだ。

さっぱりとしたそれは、締めにちょうどよかった。


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