甘い恋飯は残業後に





外に出ると、むっと暑さがまとわりつく。もう完全に夏だ。暦よりも滲み出す汗がそう教えている。わたしはポケットからハンカチを取り出し、首筋に流れた汗を拭った。

ところで、バッグの中に潜ませたあれは大丈夫だろうか。こんなに暑いなら、保冷材でも巻きつけてくればよかった。


「暑いな」

難波さんはそう言って日差しに目を細めている。

わたし達はこれから二週間ぶりに『Caro』へ巡回に向かう。二週間ぶりなんて、以前と比べたら嘘のようだ。

運転席のドアを開けると、サンシェードを付けていたにもかかわらず社用車はサウナのような暑さだった。ハンドルもこのままじゃ触ることすらままならない。わたし達はまず全てのドアを全開にして、熱い空気を抜いてから車に乗り込んだ。


――やっぱり、この暑さじゃまずいな。

「あの……難波さん」

仕事中にルール違反なのは承知の上。咎められても仕方ないけど……でも。


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