甘い恋飯は残業後に



『Caro』に着いてから、わたしは以前と同じくスタッフ用の冷蔵庫を借りることにした。これで店を出るまではダックワーズのチョコがとけることもない。


店長と店舗マネージャーとの打ち合わせを終え、いつものように店内の様子を見ていると、前に難波さんの淹れたコーヒーを一緒に飲んだ彼女――美杉(みすぎ)さんが難波さんを呼んだ。

「……向こうで」

難波さんは倉庫の方へ目配せする。わたしはふたりが倉庫に消えていくのを、ぼんやりと見送った。


――なんだろう。

ふたりの間には、わたしに聞かれたくない話があるのだろうか。


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