甘い恋飯は残業後に


「売り上げのことだ」

「ああ……そうでしたか」

「それより、さっきの。今にしないか?」

唐突に言われて、一瞬何のことかわからずきょとんとしていると、難波さんはやや言いにくそうに「『Queue』の」と言った。

コーヒーもあるし、確かにタイミング的にはちょうどいい。

わたしは冷蔵庫から使っていないハンカチにくるんでいたダックワーズを取り出し、ひとつ難波さんに手渡した。


早速パッケージを開けて、一口齧る。

「うわ……」

さくっとした食感の後に、ふわふわ、ホロリがくる。チョコレートクリームは言わずもがな、さすが『Queue』といったところ。もう「おいしい」とか、そんな言葉だけでは表せない。


「……凄いな」

難波さんも言葉を失っているようだ。

アイスコーヒーで口の中をクリアにしてしまうのも勿体ない気さえする。とはいえ飲まない訳にはいかず、わたしは仕方なくコーヒーを喉に流し入れた。


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