甘い恋飯は残業後に
○ばらされた秘密


* * *


本格的な夏を迎えて、店舗営業部では恒例の暑気払いの飲み会を行うことになった。

恒例、と言ってもカンパニーが設立されてまだ一年ちょっとで暑気払いも二度目なのだけど、回覧には目立つ文字でそう書かれていた。

暑気払いの会費だけは、ありがたいことに会社が半分持ってくれることになっている。それで幹事が調子に乗ったのか、今回は前回よりちょっと贅沢な場所を押さえたらしい。


「今日、楽しみですねー、飲み会」

「回覧にあった料理の写真、見た?」

「見ました見ました!」

「あのフィレ肉、めちゃくちゃうまそうだったよねー!」

お昼、わたしはいつものメンバーと社食に来ていた。目の前のふたりは今夜の飲み会のことで盛り上がっている。

……が、わたしはその盛り上がりには交ざれないでいた。


「『綾村』って、モリヤご用達でしたよね? ふたりとも、行ったことなかったですか?」

わたしがモリヤにいた頃、今夜行く店には一度だけ行ったことがあった。


――今では、その時のことが苦い記憶になってしまったけど。


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