甘い恋飯は残業後に


その後からわたし達はぎくしゃくし始め、結局は別れることになってしまった。

今思えば、彼は努めて何事もなかったようにしてくれていたんだと思う。

罪悪感に押し潰されて彼との関係を壊したのは、わたしの方だ。


彼の誠実さが、痛かった。こんなにも真っ直ぐな俺をどうして信じられないのか、と責め立てられているようで。


とにかくわたしは、彼から逃げたかったのだ。

フォレストに異動の希望を出したのも、それが大きな理由だった。


「……椰さん、ちょっと、万椰さん聞いてます?」

「えっ、な、何?」

気がつけば、ふたりの食器の中は空っぽになっている。わたしは慌てて、残りを口の中に放り込んだ。


「だからー、去年は課長止まりだったんですけど、今回は部長も出席するって言ってたらしいですよ、飲み会。部長まで来ると、みんな羽目外せないですよねー」

「おいおい、課長なら羽目外してもいいのか?」

大貫課長はすかさず水上ちゃんにツッコミをいれている。わたしはちょうどお茶を飲んでいるところで、水上ちゃんの慌てっぷりに吹き出しそうになってしまった。

頑張って飲み込んでから、笑う。


――難波さんも、来るのか。


以前だったら「嫌だ」と愚痴のひとつも零していたのに。

わたしはおかしくなって、その笑いに紛れさせて、笑った。


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