甘い恋飯は残業後に


難波さんは弛んだワイシャツを元通りにしまい、さっきの場所にまた腰を下ろした。少し首を傾げて、笑みを浮かべている。

「で?」

「で、って言われても……」

そんなにじっと見つめないでほしい。顔が熱くて、汗が吹き出しそうだ。


難波さんはいきなり膝立ちになったかと思えば、わたしの後ろのソファーに右手をついた。壁ドンならぬ、ソファードン。

……ってそんなことはどうでもよくて。

「桑原はどうしたい?」

「わたしは……」

顔が、近い。
恥ずかしさに目を逸らしたくなるところをぐっと堪える。今、絶対に難波さんから目を逸らしちゃだめだ。


「俺は、桑原をいつでも守りたい」

難波さんの視線がわたしを射抜く。貼りつけられたように動けなくなった。


「さっき、男に囲まれていた桑原を見た時、怒りで体が震えた。あのまま人が来なかったら、俺はあの後どこまで冷静を保てたかわからない」

鼓動はこれでもかという程、ドクドクと全身に鳴り響いている。


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