甘い恋飯は残業後に
「あの……わたし、何かしちゃいましたか」
あんな甘いキスの最中にこうなったのだから、もうわたしが何かしたとしか思えない。
「……は?」
「恥ずかしいですけど……本当にあまり経験がないから、もしかしたら難波さんの気に障るようなことをしちゃったのかなって……」
「万椰は何もしてない」
彼はそう言い放ったまま、無言を決め込んでいる。
これ以上聞いたら嫌がられそうだなと黙っていると、難波さんは路肩のちょっと広くなっているスペースに車を止めた。
ハザードスイッチを押しながら、彼は大きくため息を吐き出す。
「気にさせて悪かった」
「いえ、それは……」
難波さんはハザードスイッチを見つめたまま、またため息をついた。
「……あれ以上は無理だった」
「えっ」
わたしは意味が分からず、彼の方を見つめる。
難波さんはどさりとシートに体を預けると、そのまま窓の方を向いてしまった。
「限界だったってことだよ」
さっきから難波さんが何を言っているのかわからない。
もしかして――わたしがあまりにキスが下手過ぎて、これ以上したくなかったってことなんだろうか。
「……そうですか」
わたしの言葉が意外だったのか、難波さんは驚いた様子でこちらを向いた。