甘い恋飯は残業後に
「どうなんだろうね。俺は、想像出来ないけど」
大貫課長の口調は少し冷たく感じた。彼の心情的には、想像出来ないというより想像したくないということなのかもしれない。
大貫課長はフォレストに異動する前から『Caro』に関わってきた人だ。今回のことはきっとわたし達以上にショックを受けただろう。
「三浦係長は三か月の停職処分、でしたよね」
わたしの言葉に、目の前の大貫課長は無言で頷く。
今回は幸いなことに、目に見える形での実害はそれ程なかった。でも一歩間違えば会社に大損害を与えたかもしれなかった訳で、当然「処分は生ぬるいんじゃないか」という声も出た。
上層部の考えとしては、会社側の管理が甘かったことを挙げて、この処分内容になったと説明された。
「多分、立ち上げメンバーの難波さんにしてみれば、三浦係長が停職になったことよりも加藤シェフが切られたことの方が痛いだろうな……」
窓の外を見つめながら、大貫課長はぼそりと漏らした。
生ぬるいと言われた理由は、このこともある。
加藤シェフは、店の食材を勝手に持ち出したことが横領と判断され、今回のことで解雇処分になったのだ。
「そう言えば難波さん、今日も会社に来ないですね」
わたしは水上ちゃんの言葉に、どきりとした。