甘い恋飯は残業後に
店に来たことで、逆に心配をかけてしまっている気がする。
でも叔父さんはそれ以上何も言わず、注文した品と「これぐらい食えるだろ」とクラッカーをテーブルの上に置いていった。
久しぶりのワインを喉に流し込む。じわりと、体に染みた。
「……すぐ酔っちゃいそうだな」
ぐるりと周りを見渡してみる。キッチンから聞こえる音、お客さんの話し声……ここはやっぱり、わたしが一番ほっとする場所だ。
何気なく入口の方にも視線を送ると、扉がちょうど開いたところだった。
「あ……」
目に飛び込んできた光景に立ち上がる。
「やっぱりここに来てたか」
「難波さん!」
鼻の奥がツンとする。
――だめだ。絶対にここで泣いちゃいけない。
わたしはぐっと、下唇を噛みしめた。
「連絡する前に、もしかしてと寄ってみたんだが、勘が当たったな」
そう言って微笑んだ彼の顔には相変わらず疲れも滲んではいるけれど、どこかしらすっきりしているようにも見える。
「高柳さん、ちょっと彼女借ります」
難波さんはこちらに出てきていた叔父さんにそう告げると、「上に」と階段の上の方に視線を送った。