甘い恋飯は残業後に
『Caro一号店』も新しいシェフを迎えて、一号店独自のメニューを何品か作ろうという話が持ち上がった。
わたしはそのプロジェクトのリーダーに抜擢され、シェフ本人や店長、マネージャーとの打ち合わせの合間に、忙しい時間帯だけ美杉さんの抜けた穴を埋めている。
でも、それももうすぐお役御免。つい先日新しいスタッフが決まって、今研修中なのだ。
「はぁー……」
ヘルプ業務も終わり、さすがにため息が出た。
でも、ここで疲れてなんかいられない。わたしはこれからフォレストに戻り、午後三時からは会議が控えている。加藤シェフがグルメサイトに書いてしまった悪いイメージを払拭する為にも、社員や店舗スタッフが一丸となって頑張らねば。
「桑原」
呼ばれて振り向けば、難波さんがちょうどロッカー室から出てきたところだった。彼は制服からスーツに着替えている。
「これから戻るんだろ?」
「はい」
「俺も打ち合わせで外に出るから、乗せていく」
その話に、ありがたく乗っからせてもらう。
わたしは急いで着替えて、難波さんと店を後にした。