甘い恋飯は残業後に
「今回は何?」
「ちょっとー、随分と冷たいんじゃない? まーやちゃん。久しぶりに会ったんだからこう、兄妹らしい会話でもさ……」
「兄妹らしいって言うなら、どうして兄貴が直接連絡くれないの」
兄貴は「あー……」と言って、決まりの悪い顔をしている。
「『千里が、話したいことがあるから帰って来い、って言ってたぞ』って、高柳の叔父さんから一昨日の夜そう聞いてびっくりしたんだから。叔父さんを伝言板みたいに使わないでよ!」
「いやぁ……実は、携帯壊しちゃって。まだ新しいの買えてなくてさ」
「また?!」
じろりと横目で睨むと、兄貴はちっちゃくなった。
「仕方ないだろ……壊してしまったもんは」
「壊したんじゃなくて、壊されたんでしょ」
――図星か。兄貴はふやふやと視線をさまよわせている。
「いい歳して、ふざけたことばかりしてるからだよ」
「……うるさいなー。今日は説教されたくてお前を呼んだんじゃねーんだよ」
不服そうな顔を一瞬でまた笑顔に変えて、兄貴はわたしの顔を覗き込んだ。