甘い恋飯は残業後に
「お前さ、来週の土曜って予定ある?」
急にそう言われてもピンとこない。わたしは「ちょっと待って」と鞄から携帯を取り出し、スケジュールを確認した。
「んー……と、日曜はだめだけど、土曜はあいてる」
「おお!」
その喜びようが尚更、怪しい。何を企んでいるのやら。
「じゃあさ……土曜日、応援に来てくんない?」
「……何の?」
「サッカーの試合に決まってんだろ」
――そう言えば。
兄貴は社会人になってからも、大学のサッカー部OBでチームを作ってサッカーを続けてたんだっけ。
「でも、何で急に? 今までそんなこと一言も言わなかったのに」
「……この間、ふとしたことでお前の話になったんだよ。大学でサッカーやってた時、万椰、一度だけ見に来ただろ? で、先輩が『妹呼べ!』って言い出してさ……」
一気に脱力した。どうせそんなことだろうとは思ったけど。
「いつもそういう話になったら流してるんだよ、俺だって。でもその先輩には世話になってるし、ちょっとした借りもあるし……どうしても拒否出来なかったんだよ。な? だから、頼む!」
兄貴はギュッと目を瞑り、わたしに向かって手を合わせている。
「……仕方ないなぁ」
「マジで?! 来てくれるのか?!」
両肩を思いきり掴まれた。