甘い恋飯は残業後に
○意外な事実
* * *
あれから、難波さんはわたしを強引に巡回に連れ出すことはなくなった。
では、難波さんがおとなしくしているかと言えば、そうではない。相変わらず部長としての細かい仕事は副部長に丸投げして、自分はふらりといなくなる日々が続いていた。
恐らく今日も『Caro』に行っているのだろうが、行き先を告げないことが多いからいろいろと面倒なことが起こる。
「難波さんどこに行ったんですかねー、もうっ」
水上ちゃんはオフィスに戻ってくるなり憤慨している。
「どうしたの?」
「難波さん、十時半の来客の予定を忘れてるんだと思うんですよ。ちょっと早く着いてしまって、ってお客さん見えちゃってるんですよね」
水上ちゃんの話によると、仕方なく副部長が対応に行ったらしい。
「まったくあの人は……。わかった、難波さんの携帯に掛けてみる」
「忙しいとこすみません、万椰さん。私、お茶出しに行かなきゃいけなくて……」
水上ちゃんはあたふたしながら、給湯室の方に走っていった。
難波さんが予定を忘れるのは今に始まったことではないけど、いい加減、今日の予定ぐらいは覚えておいてほしい。