1粒の勇気
僕は走った。

急がなくてはいけない気がしたから。

気が付けばリサが見えないほどになっていた。大勢の人がいるていうのもあるけどね。

商人は何処か誇らしげに大名の背丈ほどある台の上に立っていた。

商人の横には僕よりも小さい少女が鎖につながれていた。

服はボロボロ、

頬も痩せこけていて白い肌の所々が汚れていた。

犬のように扱われている。

彼女は美しかった為かすぐに買われていった。

連れていかれる彼女の目に生気はなく、

僕はただ見ていることしか出来なかった。

「さてさて!!こいつがメインだぁ!!!!!!」

メガホンを使っている商人がさっきよりも大きな声を出した。キーーーンととても嫌な音がした。


メインと言われ出てきたのは綺麗なブロンドの髪の毛をした少女。14歳くらいだと思う。

彼女が僕に気づいた。

僕は奴隷たちの控えているところに隠れていた。

気づかれたことに驚いた。だって、こういうこともあるだろうって稽古されてたんだよ。

いろんなところに隠れては召使達を困らせていた僕が簡単に見つけられた。

何者なのだろう。

「妹を助けて」

彼女はこっそりと僕に言った。

彼女のまなざしは強く美しかった

「6年後の6月6日、この町の神木の下に私の妹のカノンが来ると思う。

その時に助けてやってほしい。」

すごいと思った。

奴隷として売られていくのに人のことを心配してるのだ。

「売られちゃうんだよ?怖くないの?」

「怖いよ。でも、家族が殺されるほうがもっと怖い。

あ、名乗っておくよ。私はリオン・アラナスだ。」

リオンは何かを諦めたような、悲しそうな眼をしていた・・・。

僕はこれ以上悲しむ人を生み出したくないと思った。

僕は王族だ。この国を変えることも可能な力をもっている。

国の王や領主になる気は更々なかったが、この国を変えたいと思った。



僕が変えてやる







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