ツンデレくんを求めてみます。
過去の話ですが。
なんで好きなのかとは何度も考えたけど、本当に好きなのかとは考えたことはない。


これは一応、誇れることであるだろうか。


「奈子さん」


スマホをいじっていると、頭の上から声がした。


「何?」


頭を上げてちらりと顔を見て、すぐにスマホに視線を戻した。


「明日、バイト入った」

「ふうん」

「……意外な反応やね」

「そう?」

「奈子さんのことやからもっと怒るかと思っとった」

「あたしをどんな目で見てんのよ。バイトなら仕方ないでしょ。これで友達と遊ぶとか言ったら怒るけど。あたしの方が先約だったし」


明日はあたしの部屋でデートをする約束をしていた。残念だとは思った。明日一日暇になるなあ。


「意外にあっさりしてるんやね」

「ありがとう」

「褒めてないけど」


あたしはスマホをジャージのズボンのポケットに入れて立ち上がった。こいつは実家生だからこの地域の方言、越中弁が混じった話し方だ。一方のあたしはここから500キロほど離れたそこそこの都会から来たから移住して2年近く経った今も標準語のままだ。


目の前の男と目が合う。5センチほどしか変わらないけど、それでも167センチあるあたしの方が小さい。全然見上げないから、少し不満ではあるけど。


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