ツンデレくんを求めてみます。
あたしはそんな心情を悟られたくなくて、中出から目を逸らした。


一緒にいると辛くなる。嬉しいのに辛い。辛いけど一緒にいたい。


「別にね、中出は無理してあたしと付き合うことないと思ってるから」

「……なんや、いきなり」

「だって、あたしと一緒にいてもあんまり楽しそうじゃないし」


あたしは何を言っているんだろう。別れるときに言うような言葉だ。


別れたくないのに。こんなに好きなのに。


「……何言っとるんや」

「だって…………志満ちゃんと一緒にいた方が楽しそうじゃん」

「なんや、嫉妬け?」


うぐ…………と言葉が詰まった。図星だ。自覚もしている。中出にもわかるくらい、あたしはあからさまに嫉妬している。


「しゃーないじゃん。もともと嫉妬深いんだから」


思わず泣きたくなってやけくそになった。強い口調で言ってしまって後悔が募る。


ああ、やだやだ。帰ってくれないかな。


中出に呆れられる自分が嫌いだ。嫌われるんじゃないかとびくびくしている自分が嫌いだ。自業自得じゃないか。


「なあ、こっち向け」

「やだ」

「こっち向けって」

「やだ」

「意外に頑固やなあ」

「知らなかったの?」

「知っとった」


中出と付き合うくらいならばある程度頑固じゃなきゃやってられない。言葉にしなくとも自分の意思を持たないとこいつとは付き合いきれないからだ。


中出がため息をつく。


「……ああ、くそっ」と声がして本当に泣きそうになったら、腰に手が回されて抱きしめられた。


「ちょ、中出?」

「黙っとけ」


ためらいがちにそっと抱きしめられたあたしは戸惑うしかなかった。逸らしていた顔を戻すと、中出は思っていたより近かったからさらに驚く。


だって、こんなこと中出がするはずない。


「…………疲れた」


中出があたしの肩に顔を埋めてぼそっと呟いた。


「あいつと会いたくなかった。今会っても変に緊張して疲れるだけやった」

「……うん。なんとなく、わかるけど」

「疲れたから…………慰めて」


中出が、初めてあたしに甘えた。


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