ツンデレくんを求めてみます。
あたしはそっと中出の背中に手を回して抱きしめた。華奢な背中は意外に広かった。


抱きしめてわかる中出の体温があたしを離れたくなくさせた。甘えた中出が急に幼く見えて、ほっとけないと母性にも似た感情が沸き上がる。


「……好きやった。でも、もう昔のことや」

「うん」


中出はあたしの肩に顔を埋めたまま深く息を吸い込んだ。そしてゆっくりと息を吐き出した。


あたしはそんな中出の頭をそっと撫でた。


「…………なあ」

「ん?」

「わからん?」

「……何が?」

「…………心臓」

「心臓?」


言われたから、あたしは抱きしめたまま中出の鼓動に耳を傾けた。ドクドクと速い鼓動。


「…………あたしより速くない?」

「当たり前やろ」


はあ……と中出がため息をつく。


「こっちはいまだに緊張しとるんに」

「は?」

「奈子さんといると緊張する。楽しくないわけやない。でも、緊張の方が勝っとるから……」


「言わせんな……」と中出が呟いた。


今度は志満ちゃんのことを言っているのだろうか。


「中出、それは言わなきゃわかんないよ」

「わかっとる。でも、俺があんま言えんの知っとるやろ?」

「あんまりというかほぼ聞いたことないけど」

「こんなに緊張するんは奈子さんだけや……」

「嫌なの?」

「嫌やったら今頃付き合っとらん」

「そりゃそうか」


あたしは中出の頭に顔を近づけた。中出の匂いが鼻をつく。


「こんなん……他の奴には感じんから」

「うん」


笑みがこぼれる。中出なりに伝えようとしてくれることが嬉しい。


「……ありがと」

「なんで奈子さんが」

「初めて自分から言ってくれたから」

「……うっせ」


中出は照れたらしい。腰に回る腕に力が入って更に引き寄せられる。強引でなくとも力が強くて、中出が男なのだと改めて自覚させられる。


< 13 / 18 >

この作品をシェア

pagetop