ツンデレくんを求めてみます。
「……俺が我慢できんから離せ」


中出があたしと向き合ってぼそりと呟いた。


「我慢しなくていいじゃん」

「…………そこは照れるとこやろ」

「それくらいじゃあたし照れないよー。だってあたしも我慢できなかったし」

「ナチュラルに変態発言すんなや」

「だって本当のことだもん。我慢する必要ないよ。あたしいつでも準備はできてるから」

「何の準備や」

「………………言わせんな」

「や、そこ照れるとこやないやろ」

「なんか恥ずかしくなった」


火照った頬に手を当てて目を逸らすと、中出が「変なとこでウブやな」と笑った。


「……しゃーないじゃん」

「ま、そこがいいとこやけどな」

「……褒められても嬉しくない」


中出は人をめったに褒めたりしないから、本来ならば手を挙げてまで喜びたいところだけど。


「帰る」

「え、ここは泊まってくとこでしょ」

「なんでや。着替えとか持ってきとらんし」

「スウェットならあるよ。一番下の弟が遊びに来たとき忘れてったやつ。あ、でもパンツがないか」

「てか、弟がスウェット忘れてったんやなくて奈子さんが奪ったんやないの? 部屋着に欲しいとか言って」

「え、なんでわかったの?」

「まじかよ……」


「どうせ明日授業一限やから帰る」と言った中出は帰って行った。


泊まって欲しかったけどあっさり帰したあたしをどうか褒めてほしい。


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