ツンデレくんを求めてみます。
数日後、中出は再びあたしの部屋に来た。


「ねえ中出、今日こそ泊まってくよね?」

「嫌や。俺は帰る」


部活で疲れたのか付いているテレビをぼんやりと見ている中出の背中に、自分の背中を合わせた。


「……熱い」

「熱くないよ、あたしは。くっついてるの背中だけだし」


はあ、とため息をついた中出は離れるかと思ったらそのまま動かなかったから、あたしは中出の背中に体重を預けた。


中出の体温を背中で感じながらなんで中出が好きかを考えた。


考えなくても答えは出た。一緒にいたくなるから好き。触れたくなるから好き。ただそれだけだ。


「…………好きだよ、駿哉」


テレビの音に消されてしまうような小さな声で呟いたから、聞こえたかどうかはわからない。


不意に中出が立ち上がった。中出に体重を預けていたあたしは支えるものがなくなって床に倒れてしまった。


「……立つなら一言言ってよ」

「帰る」

「あ、そう。じゃ、おやすみ」


無理強いはしない。本当は引き止めたいけど、中出の邪魔はしたくないし、中出がしたかったらすればいいと思う。少なくとも今はそう思っている。


「あと、奈子さん」

「はい?」

「腹出てる」


あたしは慌てて起き上がった。服の裾を引っ張る。


「は、早く言って!」


中出は声を上げて笑った。やっぱりこいつは笑顔が似合う種類の男だ。


「こんなんで恥ずかしがるんやから、まだまだ無理やな」


そう言って中出は笑ったまま帰っていった。


たぶんあたしは、そんな中出に翻弄されながらこれからも一緒にいるのだろう。





END.


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