ツンデレくんを求めてみます。
「ふうん」


中出があたしにスマホを投げてよこしたから、あたしは慌ててキャッチした。


「ちょ、あたしのなんですけど」

「知らんわ」

「えー、あたしは可愛いと思うけど。あ、あと大食いらしいよ。やっぱり中出だねー」

「嫌みか」


中出は男だけあって大食いだ。華奢だけど部内の中でも食べる方だから、先輩からはデブと呼ばれることもある。それを言っているらしい。


「いや、あたしは別に中出がデブとは言ってないよ」

「言っとるわ」

「しかも本気で思ってないし。モグラって言ったのは志満ちゃんだし」

「あいつ、明日覚えとけ」

「あ、でもモグラの話は言わないでって言われてたんだった」

「言っといてやるから安心しろ」

「ちょっと、やめてよね」

「嫌や」

「性格悪い」


今度は中出が笑う番だった。


なんでこいつは、志満ちゃんの話になると嬉しそうに笑うのだろう。


あたしと別の話をしているときは、興味なさそうな顔でいるくせに。


同じ部活なのだから当然志満ちゃんと中出が話すところも何度か見かけている。その度に中出はあたしには見せない笑顔を志満ちゃんに見せているのだ。


嫉妬しているのかな、志満ちゃんに。情けない。だったら、志満ちゃんと話したことなんて出さなければよかったのに。


あたしはけっこう、嫉妬深い。


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