ツンデレくんを求めてみます。
「俺が今までで一番女子の中で仲がよかった。話すだけですげー楽しかったし、あっちも少なからず俺に好意を持ってくれてたと思う」


あたしは黙って中出の話に耳を傾けていた。中出の顔は見れない。


「でも、俺が告白する前にそいつには彼氏ができた。それでもいいと思った。付き合ってからも俺らは仲がよかったし、俺が付き合えるとは思ってなかったから」

「賢明な判断だね」


あたしの言葉にじろりと睨んだ中出は続けた。


「一回だけ、告白に似たことは言った。放課後二人で話してて、時間になったから彼氏と帰るって言ってそいつが帰ろうとした。俺、なんか無性に帰したくなくて、思わず俺にしとけばいいのにって言って腕を掴んじゃって。そいつは戸惑った顔したからなんでもないって言って見送ったけど…………って、奈子さん、なんで顔赤いん」


あたしの顔は中出が指摘したほどに燃えるように熱くなっていた。聞いているこっちが恥ずかしい。


「いや、中出けっこう積極的だなって思って。本当に好きだったんだね」

「……でも、それだけや。好きなんて言えずに卒業した」

「その子は、大学も一緒なの?」

「医学部やからキャンパス違くて今まで一度も会わなかった。一昨日工学部棟にいたからびっくりして」

「へえ」

「高校時代と何も変わらんくて…………なんか」


最後まで聞きたくなくてあたしは立ち上がった。顔を上げた中出と目が合う。


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