あたしの好きな人
「お前の家どこ?」
「んー?えっと、これ」
「は?んな近くにあるわけ……て、ほんとだ岩崎だ」
稜があたしのカバンから鍵を取り出して家の玄関をあけた。
「稜?あたし大丈夫だよ?」
「は?まじバッカじゃねーの、大丈夫なわけないだろ」
なんて、バカにされながら
すぐに気づかなくてごめんな、なんて謝る稜は優しい。
稜って、やっぱり優しい。
「部屋までいける?」
「…そんなヘタレじゃないしー」
口で言い返すのは簡単だけど、やっぱり体はダルいのかも。
階段を上るのもやっとだ。
あー……熱上がってる気がするよ。
「波奈、体温はかって」
「…ん」
あたしが体温はかってる間も、稜は冷えピタと氷枕を用意した。
………その体温計、冷えピタ、氷枕、どこから見つけたんだろう。
そんなどうでもいいことしか考えられなくなる。
あぁ…頭痛くなってきた
「もう寝ろ」
そう言ってテンポよくリズムを打つ稜の手は、あたしを睡眠の世界に誘った。