適当魔法少女・りおん
急かす様に女は言い、いとおしくケースの蓋を閉じた――。
封がついた新札で一千万円――その代償に、男のフルエアロ仕様の黒いミニヴァンと本来、この二人が最も大切にしなければならない双子の娘が「生け贄」として闇の世界に捧げられた――――。
「そうか、お前、あの二人が消えて良かったと思ってるんだろ――」
「何言ってるの――アンタこそ、せいせいしてるんじゃないの――あの二人より車の方が大事だもんね――どれくらいのムダ金消えたと思ってんの――」
いい大人の、「子供染みた」やりとりを桃迦は蔑み、口元を緩める――。
「お前こそ何だよ――家事や子育ても、まともにできないくせに、ストレス解消とかいってパチンコ、スロットにのめり込んで借金なんか作りやがって――」
「アンタに言われたくないわ――くっだらない何とかパーツや、アルミホイールやらタイヤに車本体以上の金かけてるのに、どんどん下品になって、馬鹿じゃないの――もう、あんな車に乗らなくていいかと思うと、全くホッとするわよ――」
「何だとテメぇ、この野郎――」
男は女の胸ぐらを掴み、脅し、絶叫した――。