適当魔法少女・りおん
「ほら、始まった――都合が悪くなると、そうやって脅して、凄んで、そして暴力で屈服させようとする――」
「昼間っから酒をあおってるお前に言われたくないね――あいつらに折檻してる事を、オレが知らないとでも思ってたのかよ――」
「ふん、定職に就けないアンタが偉そうに――この間のバイトだって、年下にコキ使われるのが気に入らないからって、1日で辞めて帰ってくるし――それなのに、また下らない車のパーツ買って借金増やして――いい加減、その性格直して真面目に働いてよっ――」
「だったらテメぇも酒ばっか喰らってねぇで、パートでも何でも働きに出ろやっ――」
大切な「存在達」を忘れ、二人の遇にもつかないやりとりが続く――。
「観なさい、あれが遠い昔、互いに愛を誓い、甘くとろける未来を想像し、二つの命を授かり、幸福を紡ごうとして失敗し、道を踏み外した愚かな人間の末路よ――――」
従えた豹の背の毛を、透き通るしなやかな指で優しく擦りながら、やりとりを「楽しんでいる」桃迦は言った――。
少女の佇まいに内在する狂気と色香――。
幼げな表情と狡猾な瞳――。