適当魔法少女・りおん
思い出せない――。
そもそも、本当に記憶に残っていた声なのか――それとも、迷いを封じる為に、魔法少女たりたいりおんの意識が創り、聞かせた言葉なのか――。
「ええいっ、もういいっ――」
迷い、弱さ、恐れを払いのけ、人として、少女として、女として、りおんはあるべき自分の未来を導く、一方の選択肢をタップした――。
『魔法遺伝子保有者による宣誓が完了しました――――』
『これより5秒の内に画面をタップすると、初期設定画面に戻ります――』
タブレットに数字が表示され、カウントが始まる――。
『5、4、3、2、1――0――』
りおんに迷いはない――。
『最終確認――完了――』
『魔法監理局サーバーに、魔法遺伝子保有者の情報を登録します――』
『登録完了――認識番号―11777番――』
『魔法少女――りおん――』
『おめでとう――そして――』
『お帰りなさい――――』
その時だけ、感情を帯びた声で女性アナウンスが言い、りおんの発光現象も消えてゆき、部屋の灯りが戻る――。
「りおん――」