適当魔法少女・りおん
「うん、ステッキさんは、そうでなくっちゃね――」
カジュアルな服に着替えたりおんが、笑顔で言う――。
「飛ぶぞ――りおん――」
ステッキさんは、窓辺に移動した――どうやら、バルコニーから飛び立つつもりらしい――。
窓を開け、バルコニーへ出た二人――。
「私を持て、りおん――」
左手でステッキさんを持ったりおん――本来、右利きのりおんだが、「潜在的」な利き腕は、左利きを伺わせる行為だった――。
「飛行モードシークエンス開始及び、戦闘体型へ移行――」
ステッキさんが術式を唱えると、彼の「身長」が伸び、佇まいにも精悍さが加えられる――。
「怖くはないか――」
「うん――」
手摺によじ登ったりおんの答えが、少し震えていた――。
「行くぞ――」
勢いのいい掛け声を受けて、身を前方へ投げ出すりおん――――やはり目を閉じてしまう――「飛べない」人間の当然な反応――。
「ふわり――」
空気の薄い膜に、ちょこんと乗っかっている様な感触――。
「うわぁ――」
目を開き、感嘆する――。
「浮いてる――」