適当魔法少女・りおん
弧は、たちまちダークエネルギーと同等の幅にまで広がった――。
「シュッ――――」
波打つダークエネルギーの僅かな厚みの真ん中を、弧は貫く――。
呆気ないのか、やはり、りおんの攻撃がオーバースペックだったのか、まるで蒸発する様に闇色の物質は跡形もなく消え、「成仏」した証なのか、虹色の中にクリスタルを散りばめて、キラキラと輝きを放つ美しいオーロラ現象がしばらく続き、やがてゆっくりと色を、輝きを失ってゆき、宇宙は通常の色調と音を取り戻した――。
「綺麗だったね――」
「それだけ念の想いが強かった証拠だ――」
「わたし――やったんだね――」
「見事だ――りおん――」
「ふううぅ――」
張り詰めた意識が緩むりおん――適当に魔法を操り、ネタを展開していても、空を飛び、宇宙空間を漂い、「敵」と言われた物質を葬る――。
あり得ない事ばかりなのだ――りおんが、わりと簡単に魔法少女の道を選択したとはいえ、意識の、魂の奥底では、不安、恐れ、疑心が蠢いていたに違いない――。
それらが集約されたものが今、言葉に貼り付き、解放された――。