薬指の約束は社内秘で
第6章 クールな彼の秘め事


葛城さんってば。こんなに目立つ場所で、気にならないのかな?

一番奥のボックス席で淹れてもらったばかりのブレンドを口にしながら、店内をそろりと見渡す。

やっぱり会社の近くとあって社内で見たことのある顔がいくつもあった。

ただならぬ関係だった瑞樹と葛城さんの事情を聞いてすぐに、葛城さんのスーツの内ポケットから電話が鳴り響いてしまい、

仕事モードに入った彼から誘いのメールを受け取ったのは定時後の女子更衣室だった。


メールの内容は出張前の約束通りに食事の誘いと、「自分の仕事が終わるまで会社の近くのカフェで待っていてほしい」というものだったんだけど。

店内にいる社内の人間を確認すること、15分。

どうやらこの店は社内の人間の待ち合わせ場所に、よく使われてるみたい。

「あっ、またひとり増えた。――って、やっぱりまずいよねぇ」

ブレンドを半分飲み終えたところで鞄からスマホを取り出し、待ち合わせ場所の変更メールを打ち始めると、隣のテーブルに向かい合って座る女の子達から、何やらひそめた声が。
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