薬指の約束は社内秘で
柔らかい瞳に見つめられるだけで、鳴り止まない鼓動が車内に響いてしまいそうで、

「えっと。葛城さんが食べたいもので、いいです……」

煩い鼓動を落ち着かせ、何とか声を絞り出すと、

「なんだ。今日はずいぶん謙虚だな。食い倒れツアーも覚悟してたんだけど」

意地悪に細まる瞳が不意な逆光で色濃く染まる。

二人の関係を知ったからなのか、逆光で影が射した瞳がどことなく瑞樹のものと似ている気がした。


さっき更衣室でぱったり会った美希ちゃんに聞いてみたら、創業者一族は会長をはじめ『瀬戸』という苗字で統一されてるらしい。

瑞樹と葛城さんが従兄弟同士だなんて、そんな話も聞いたことがなかった。

だから、美希ちゃんにもそのことは話せなかったけど。
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