薬指の約束は社内秘で
お祭りでも相当ムキになってたもんなぁ。

射的の腕前はプロ並なのに水ヨーヨーに苦戦していた横顔を思い出す。

仕事モードのときには絶対に見せない意外な一面に頬を緩めると、不意に背中から覆い被さられ、耳元でそっと囁かれた。


「心配?」

耳たぶにかかる吐息にピクッと肩が震えて、右手からスポンジが滑り落ちる。

それだけでも鼓動が速まってしまうのに……

葛城さんはシンクに落ちたスポンジを手に取ると、泡のついた指先を絡めるようにして私に握らせた。

滑らかな指先と絡み合い、背中越しに感じる体温に、

どうしようもなく頬が熱くなるのに――……


葛城さんは私に覆いかぶさった状態で自分の手を洗い流しながら、気持ちを煽るような囁きを続けていく。

「だったら、今日から3食な」

「3食――……ですか?」

「あぁ」


それって、明日の朝もってこと?
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