薬指の約束は社内秘で
「そんなことないです! また朝まで、一緒に過ごしましょう!!」
思わず力が入ったそのセリフにハッと息を呑む。けれど、もう遅い。
家族連れやカップルで賑わうフロアに思いのほか響き渡ってしまったようで、周りからクスクスッと笑い声が漏れた。
しまった! 朝までとかリアルすぎだし!! しかも催促してるみたいだって……
驚いたように目を見開いていた葛城さんも周囲の視線に我に返る。
数秒前の甘ったるさを消し去った鋭い瞳で睨まれた。
「すっ、すみません!」
あぁ。穴があったら入りたい。むしろ掘ってでも、埋めてください……
近くを歩く幼稚園ぐらいの女の子が、「朝までってなぁに?」とお母さんらしき女性に聞いているのが聞こえてきて、そちらにも頭を下げたくなると、
「――ったく。さっさと行くぞ。家まで送る」
葛城さんは怒ったような口調で私の手を取り、足早に歩き出した。
「怒ってます、よね?」
しばらく歩いたところで無言の圧力に耐えきれず聞いてみたら、ふぅっと短く息をついた葛城さんがニヤリと口角を引き上げる。
「怒ってない。藤川のやらかしぶりには職場で免疫できたしな」
思わず力が入ったそのセリフにハッと息を呑む。けれど、もう遅い。
家族連れやカップルで賑わうフロアに思いのほか響き渡ってしまったようで、周りからクスクスッと笑い声が漏れた。
しまった! 朝までとかリアルすぎだし!! しかも催促してるみたいだって……
驚いたように目を見開いていた葛城さんも周囲の視線に我に返る。
数秒前の甘ったるさを消し去った鋭い瞳で睨まれた。
「すっ、すみません!」
あぁ。穴があったら入りたい。むしろ掘ってでも、埋めてください……
近くを歩く幼稚園ぐらいの女の子が、「朝までってなぁに?」とお母さんらしき女性に聞いているのが聞こえてきて、そちらにも頭を下げたくなると、
「――ったく。さっさと行くぞ。家まで送る」
葛城さんは怒ったような口調で私の手を取り、足早に歩き出した。
「怒ってます、よね?」
しばらく歩いたところで無言の圧力に耐えきれず聞いてみたら、ふぅっと短く息をついた葛城さんがニヤリと口角を引き上げる。
「怒ってない。藤川のやらかしぶりには職場で免疫できたしな」