薬指の約束は社内秘で
「あのっ、私……友達と外で待ち合わせてるので」

探るような瞳から逃れるように早足で女子トイレを後にした。


今日のランチは、久々に愛美と待ち合わせをしていた。
ドイツ出張から帰ってきた葛城さんと待ち合わせたカフェでメニューを眺めていると、テーブルに人影が差す。

引き上げた顔の先には息をきらせた愛美の顔があった。

「ごめんねっ、ちょっと遅れちゃった」

「全然だよっ。こっちこそ急に誘っちゃって、大丈夫だった?」

「こっちこそ、全~然っ。私は婚約して仕事も辞めちゃったし。毎日が日曜日みたいなもんだから」

遅れてやって来た愛美が私と同じハンバーグランチを注文する。
彼女が氷入りのお水を一口飲んでから、彼女に話を切り出した。
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