薬指の約束は社内秘で
何度謝っても謝りきれないあの日のことを思うと傷を負わせたのは私なのに、胸がキリキリと痛み出す。

「愛美は、昔からそういうところ、全然変わらないよね……」

「えぇ、なにそれ?」

私の心を見透かしたのか、愛美は困ったように微笑んだ。



結局、1時間という短くもない昼休みは、私の恋バナで盛り上がるだけ盛り上がって終わってしまった。

会計を済ませてお店を出ると、愛美が頬にかかった髪を耳にかける。
腰まである黒髪がふわりと揺れるその仕草はシャンプーのCMモデルのように様になっていたんだけど、


「あれ、愛美?」

「ん?」

「あっ、ううん。なんでもない」

「えぇ~なによぉ。言いかけてやめるなんて、気になるじゃない」

「ごめんごめん! でも、本当に、何を言おうとしたのか分かんなくなっちゃって」

「えぇ、なにそれぇ」
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