薬指の約束は社内秘で

「――藤川には、関係ない」

すべての感情を押し殺すような冷えきった声が頭の芯まで届く。

はっきり言い切られた言葉に、一瞬見えた歪んだ表情に、言いようのない想いが激しく軋み出した胸を占領していく。


「そう……ですか。でもっ」

続けようとした言葉も葛城さんは遮るように歩き出してしまう。

そんな彼の態度にただただ呆然と動けないでいると、「藤川さん」と背中に声がかかる。

振り返った先には仙道さんが立っていた。


「あのっ、いまっ……友達と私がいて、それでっ、葛城さんが知り合いだったみたいで」
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