薬指の約束は社内秘で
声にするとひどく支離滅裂で、自分で思っているよりずっと動揺していると気づかされる。
すがるような私に仙道さんは、「えぇ。そうね」と綺麗にマスカラが塗られた長いまつげを伏せた。


「仙道さんも、愛美のこと知ってるんですか? 二人はどういうっ――」

「ごめんなさい。私からは何も言えない」


遠慮がちだけど意志の強さを感じさせる口調に、彼女からそれ以上のことを聞き出すことは無理だと思った。

ただじっと彼女の瞳を見つめ返すことしか出来ない。

震える心を落ち着かせる為にギュッと手を握りしめた。
< 252 / 432 >

この作品をシェア

pagetop