薬指の約束は社内秘で
「ふふっ。それはそれ。これはこれってわけで、プリン頂きま~す」

「はいはい。どうぞ、召し上がれ」

美希ちゃんのついた大嘘には、私を含む3課のみんながまんまと騙されたってわけだけど。

検査入院で明日には退院できると聞いてホッとしたところで、買ってきた花束を手に持ち来客用のパイプ椅子から立ち上がった。


消毒液の匂いが鼻につく廊下を進み、来客用の給湯室に辿り着く。
いくつか置いてある花瓶からちょうどいいサイズのものを選んでいると、ふとあの日のことが頭を過った。

連絡の取れない愛美と彼女との関係を語ろうとしない葛城さん。
あのときの態度から二人が顔見知りだったのは、明白だ。

もしかして男女の関係?

一瞬そんなことが頭を過った。
でも知り合って間もない葛城さんはともかく、愛美から彼の名前を聞いたことはいままで一度もなかったから、それは違うと思った。
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