薬指の約束は社内秘で
第8章 初恋の彼に触れた日
夢を見た――
夢の中で私は髪を一つにまとめて、リクルートスーツを着ている。
隣には同じように真新しいスーツに身を包む背の高い男の人がいた。
白い肌に薄らと浮かぶ片えくぼ。私を見つめる柔らかい瞳に、これが夢ではなく現実にあった出来事だとやっと気づく。
あぁ。そうだこれは、瑞樹と再会したあのときの――
会社のロビーで定期を拾ってもらったことが縁で、彼と何度か会うようになった。
就活情報を交換したカフェでの帰り、瑞樹に突然こんな話を振られた。
『愛ちゃんってもしかして、静岡の高良町の出身じゃない?』
『えっ。どうして知ってるんですか?』
『ハンカチに名前があったから…』
『ハンカチ?』