薬指の約束は社内秘で
そして、溢れそうになる涙を堪えて辿り着いた場所には、膝を抱えて泣いている私がいた。

あの時の私は、自分のことでいっぱいいっぱいで、


『これ、あげる』

葛城さんがどんな想いでクローバーを差し出したかを。
躊躇する私の顔を祈るような気持ちで見つめていたことを。

気付いてあげられなかったんだね……。


それからしばらくして2人で手を繋いで町まで戻り、私の姿を見るなり駆け寄って抱きしめてくれたお父さんの腕の中にいると、近くで悲鳴のような声が上がった。

『どうしてっ! 突然、いなくなったりするの!!』

それは葛城さんの担任である女教師の怒りに震える声。
周りには制服を着たお巡りさんや町の人達がたくさんいた。
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