薬指の約束は社内秘で
『だからっ、この子のこと怒らないで?』

その言葉はこれまで何度も堪えてきた葛城さんの涙腺を一気に緩ませ、涙の粒がぽろぽろと零れ落ちた。


泣いたら、私がついた嘘だって、バレちゃうっ。


『泣かないで?』

彼の頬を止めどなく零れ落ちる涙をいつもお父さんがしてくれるみたいにハンカチでトントンと拭うと、彼がハンカチをギュッと握りしめた。

あの時私は、まだ知らなかったんだ。嬉しい時に流れる涙の意味を―ー……。

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