薬指の約束は社内秘で
足場の悪いうっそうとした林道をあの頃のように手を繋ぎながら進んで行く。
遠い日の記憶を呼び起こすよう、ゆっくり語っていた彼の言葉がそこで途切れる。
ふと視線を感じて顔を横に向けると、優しい色を湛えた瞳が私だけを見つめた。
「嬉しくて泣いたことなんてなかった。あの日、言葉で救われることを初めて知ったんだ……」
柔らかく細まる瞳は、いつだって私の胸を温かくしてくれる。
しばらくその場に足を止めて見つめあうと、葛城さんはジャケットの内ポケットから何を取り出した。
クールな彼には似合わない花柄のハンカチに見覚えがあった。