薬指の約束は社内秘で
第9章 守るための真実
お盆休みが終わり、東京へ帰る新幹線の中で愛美にメールを打った。
彼女からの返信によると今日は家にいるようだったから、旅行バッグを持ったまま彼女のマンションへ向かうことにした。
いつも旅行帰りは足取りが重く疲れきっているけれど、今日のそれはいままでの人生でぶっちぎりの一番と言えるかもしれない。
お父さんお手製の惣菜やら手土産で、行きよりもずっと重たくなった旅行鞄を肩にかけながら、駅の改札を出る。
タクシーでもバスでもなくあえて歩くことを選択したのは、愛美に会うのを少しでも先延ばしにしたかった気持ちが、どこかにあるんだと思う。
ふと、葛城さんの苦痛に歪んだ顔と彼の言葉が頭を過る。
『簡単に信じたりするから、騙されたり裏切られたりするんだ』
その通りだった。相手の言葉を額面通りに受け取ってしまう私は、いつも大事なことを見落してしまう。