薬指の約束は社内秘で
彼女の言葉に息を呑むのと同時に、膝に置いた指先が震え出す。
それは、すべての疑問を解き明かすものだった。


「もう……やめて」

膝に視線を落としたまま消え入るような声を漏らすと、ハッと息を呑む気配がした。

「ごめん。私、無神経だったよね」

ゆっくり顔を上げると、愛美の瞳に切なげな色が差す。
まっすぐ彼女を見据えながら声にした。


「謝らなくていいっ。いい……から――、本当のことを教えて?」

私の言葉に「えっ」と彼女が言葉を詰まらせたのは、言葉がよく聞き取れなかったから――ではないだろう。


「愛美。私に嘘ついてるよね?」

揺れ動く瞳と視線がぶつかり、愛美が先に逸らす。
それが、答えだと思った。
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